父方の祖母

父方の祖母はとても頭のいい人だった。

お見合いの日に、お姑さんに、紙を1枚

渡されて、連鶴を折るように言われた。

その場で折ったそう。

「知ってたの?」

「いいや、その時に考えた。」という。

老人の集まりで、小さな人形を作った。

「可愛いやん」私がいうと

「どこが可愛い!万葉集の講義なら喜んで

行く。だけど、こんなしょうもないもんのために集められる。私たち年よりはバカに

されとるのや。」

憤懣やるかたない、そんな感じだった。

私と祖母はとても中がよかった。

でも、亡くなる数ヶ月前に、買い物のお釣

について、「おかしい」といっていると

聞いた。あー、それならしばらく会いに

行かなくてもいい、と思った。

そのまま、祖母は亡くなったので、悲しみ

が全く来なかった。

あとで、自分の愛するものとは、亡くなる

前にそうしたことをして、悲しませないよ

うにすると聞いた。

人に愛されるとはこういうことだった。

そんな祖母は1日だけ入院してなくなった。

病院から帰ってきた祖母の家は、およそ

何もかもなくなっていた。

押入れ、箪笥の中、食器棚、押入れの天袋

に至るまで。

何年も掛けて 処分したようだ。

でも、押入れに1枚、きものが残されていて、「お棺に入れる時に 着せるきもの」と

書かれていた。

賢い人は最後まで身綺麗だった。