雷 と 龍 神 さ ん

 

阪神淡路大震災の前の年に雨が降らなかった。

その年、私はなぜか、本当によくタクシーに乗った。

タクシーの運転手さんが決まったように言う。

「こんなに雨が、降らなんだら 地震が来まっせ。」

何人もの運転手さんに 言われた。

タクシーの運転手さんは いつも地面の上を走っているので  地面について何か感じることがあるのかな?とは思ったけれど、その時は

妙に印象に残っただけだった。

でも、数日後にテレビで 神戸、京都、大阪の上町台地、は危ない。

他にも言ったかもしれないけれど、忘れた。

兎に角、あっちこっちで聞くときは用心しないといけない。

そこで、うちの氏神さんに 飛んで行った。

「このまま、晴れが続いたら、地震になります。どうか、雨をお願いします!」

でも、少しは降っても、地面が冷えるほどじゃない。住吉の ちょっと知ってる龍神さんにも頼んでみた。

ちょろっとは降る。でも、十分じゃない。

あかん と。こうなったら、お伊勢さんに頼むしかないと 家族でお伊勢さんに頼みに行った。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、五十鈴川のすぐそばに

瀧祭の神様がおられる。土地の人は 取次さんと呼んで、

まずここに 参って取り次いでもらうという。

ここでまあ、ここぞというぐらい全身全霊で「雨」をお願いした。

勿論、本殿でも。

すると、あの宇治橋を出たとたん、これ以上ないぐらいの大粒の雨が降ってきた。

その後は 一晩中、大雨と雷が鳴り続いた。

でも、ほんとは雨はお伊勢さんに振ってほしかったんじゃなくて、

神戸に降ってほしかった。

けれど、雷は願掛けの結願を知らせるという

結局、地震は起きてしまったので これ以上のことはわたしは分らない。

でも、これ以来。私が 初めて 訪れる土地では 決まって雷が鳴るようになった。