お葬式の時に、喧嘩

小さい頃、バレエを習っていた。
一緒に、習っていた友達のお母さんの夢を見た。
もう、会わなくなって二十年が経つ。
そのお顔は、はっきりしていて、差し迫っておられた。
これは、何かある。
急いで、彼女に電話を掛けた。
(何か、思い当たることない?)
(じゃあ、お父さん、お元気かしら?
一度、見に行ってあげて!)
私の、この厚かましい、頼みごとを、聞いて
くれて、直ぐに!ご実家に行ってくれた。
(父は、大丈夫。元気そうでした。)
こうした電話まで、折り返してくれた。
(えっ?そうやったん!ごめんなさい。)
(じゃあ、なんだったんだろう?)
あれこれ話しているうち、なくなったお母さんのお葬式の話しになった。
その時、身内の方々が、ものすごい喧嘩になったという。
こう聞くと、日常、喧嘩なんか、よくあることだと、お思いになると思う。
でも、そんな御家族じゃあなかった。
極め付きの、穏やかな御家族だった。
(あー、じゃあ、お母さん、何か、思いを
残して、逝かれた?)
(何かは、言えないけれど、大きな借りものが、
あったことが、あとで、わかったようです。)
(あー、それだ、あなた、大変だとは思うけれど、お母さんのお墓に、行って。大丈夫、
ちゃんと、借りたものは、返せるし、逆に、財産みたいなもんやから、お母さんは、このことを、もう悔やまなくても、いい。
って、言ってあげてもらえないかしら?)
これまた、差し出がましいお願いをした。
直後に、彼女は、お墓に行かれたそうで
ご報告まで、いただいた。
その後、二度と!そのお母さんが、夢に出てこられることは、なかった。
だけど、私の、こんな無理からの電話に、動いてくれるお嬢さんなんて、ちょっと、羨ましい気もします。
大体、この手の、申し出が、受け入れられることは 、めったにない。
ある人と、出会った後、急に、膝が痛くなった。その人に、電話をして、お姑さんに、水子さん、いらっしゃる?
と、聞いてみた。(うーん、大丈夫)
と言いながら、心の中で、(よその家のことは、ほっといて!)とおっしゃる。
その途端、私の、膝に居た、何かは、
すーっと、そのかたの、ところに、飛んでいかれた。
一体、何人の方に、水子さんを、祀ってあげて!と、頼んだことか。
やってみる、といわれたことは、ないと思う。
もったいない。ちゃんと育つ子供たちを、守ってくれるのになと いつも、思っていた。
もし、晩年になって、特に、理由が無くて、腰痛や、膝が痛くて、歩けなくなったら、あなたや、お母さんに水子さんがないか、お調べになると、いいかもしれない。
その膝痛が、歩けない程じゃなくて、ひょっとしたら、シャワーだけで、お風呂に入らない故の、単なる冷えかもしれない。
その見極めは、御本人にしかわからない。