小さい頃、両親が常磐津を習った

ちょっと色っぽいお師匠さんが、毎週、お

稽古に来られる。

両親が揃って、練習しているが、これが

まあ、下手。

声が出てない上に、音程もさっぱり。

筋も見込みも、全くなかった。

私は、何が、常磐津か?

戦争から帰ってきて、十年しか経たぬのに

と思った。

 

私は、まだ、幼稚園へも行っていなかった

ので、3歳~4歳だったと思う。

なんと、生意気なことか?

 

まさか、こんな小さな子供が、こんな

視点を持つ筈ないとお思いになると思う

でも、私には、私の過去世で父の父親だっ

た時の記憶が、遠くに残っていた。

 

でも、彼女の唄うメロディーは結構、気に

入って、口ずさんだ。

わたしは、過去世に於いてアメリカで黒人

時代に歌を歌っていたので、難しくはなか

った。

それを、常磐津の師匠に話したらしい。

一度、子供さんのを、聞きたいと、言われ

た。

私は、てっきり、オーディションが始まる

と思っていた。

だが、両親は、そのお稽古を直ぐに止めた。

当たり前やん。

なに、余裕、こいとんねん。

今は、一生懸命、働く時や。

そう、思った。

何故、両親が止めたかは、判らない。

祖母に聞くと「あんたが、仮に花柳界にでも入ることになったらと、心配した。」

といった。

まあ、いいやん、結果オーライ、そう思った。